アメリカンブランドの中国生産からの撤退
アメリカを代表する腕時計ブランド「フォッシル(Fossil)」が、中国での生産を完全に停止する方針を固めました。これに伴い、長年同社の製品製造を請け負ってきた中国・東莞市の契約製造業者「プレシジョン・カンパニー」は、事業存続の危機に直面しています。
同社は先月、従業員向けに「3ヶ月間の工場閉鎖と一時解雇(レイオフ)」を発表。この時期に退職を希望する従業員に対しては、通常の退職金に加えて特別手当を支給するなど、異例の対応を示しています。
パンデミックがもたらした時計業界の構造変化
世界的なCOVID-19パンデミックは、時計製造業界を含む多くの業界に深刻な影響を与えています。特に中国を主要生産拠点とする国際ブランドは、以下のような課題に直面しています:
- サプライチェーンの混乱
- 人件費の上昇
- 地政学的リスクの増大
- 消費市場の変化(中国市場の成長鈍化)
フォッシル社の決定は、こうした構造的な変化に対する対応の一環と見られています。同社は2020年以降、生産拠点の分散化を進めており、今回の中国撤退はその最終段階と言えます。
東莞工場の現状と従業員への影響
プレシジョン・カンパニーは最盛期には5,000人以上の従業員を抱える東莞市有数の時計製造工場でしたが、現在はその規模を大幅に縮小。フォッシル社からの発注量減少に伴い、2021年以降は段階的な人員削減を続けてきました。
今回の発表で、同社は以下の措置を講じるとしています:
- 3ヶ月間の完全操業停止
- 全従業員の一時解雇(期間限定)
- 自主退職者への特別補償(基本給の3ヶ月分相当)
- 再開時の優先採用枠の設定
地元労働組合の関係者は「この措置が恒久的な閉鎖への前段階である可能性が高い」と指摘しています。
時計業界の今後の見通し
専門家によれば、フォッシル社の動きは時計業界全体の傾向を反映したものだといいます。近年、多くの腕時計メーカーが:
- 中国依存からの脱却
- 東南アジアやインドへの生産移管
- 自動化・ロボット化の推進
- サステナビリティを重視した製造プロセスの見直し
といった戦略的転換を進めています。パンデミックはこれらの動きを加速させる要因となったのです。
特にエントリーモデルからミドルレンジにかけての製品ラインでは、価格競争力維持のため、より低コストな生産拠点への移行が急ピッチで進められています。
まとめ
フォッシルブランドの中国生産撤退と東莞工場の閉鎖危機は、パンデミック後のグローバルサプライチェーン再編の一端を象徴する事例です。時計業界では、このような生産体制の見直しが今後も続くと予想されます。
一方で、こうした変化は単なるコスト削減ではなく、持続可能なビジネスモデル構築に向けた業界全体の取り組みの表れでもあります。今後の動向から目が離せません。
