米スポーツウェア大手ナイキ(Nike)が、グローバル規模での組織再編の一環として、従業員の約2%にあたる1,600人以上を解雇する方針を明らかにした。この決定は2023年初頭に発表されたコスト削減計画の一環で、同社のジョン・ドナホーCEOが全社員宛てのメールで通知した。
アパレル業界全体に広がるリストラの波
ナイキの今回の決定は、アパレル・フットウェア業界全体で進行しているリストラ動向の最新事例と言える。2023年初めにはジーンズブランドで知られるリーバイス(Levi's)が大規模なレイオフを実施しており、業界全体でコスト削減の動きが加速している。
ドナホーCEOによれば、今回のリストラは「よりシンプルでフラットな組織構造」を実現するための戦略的一環だという。ナイキは2020年からのパンデミック後の需要急増を受けて従業員数を増加させてきたが、現在はインフレ抑制や経済不確実性への対応として経費削減に注力している。
中国市場における影響は限定的
興味深いことに、中国市場でのナイキ従業員に対する影響は現時点で比較的少ないようだ。複数の中国在住ナイキ従業員によれば、「解雇はまだ先のようだ」との認識が広がっている。これは中国市場がナイキにとって依然として重要な成長エンジンであり続けていることの表れかもしれない。
アナリストによると、ナイキの中国市場における売上は2023年第4四半期に13%増加しており、北米市場の1%増を大きく上回っている。このような業績の地域差が、リストラ実施における地域ごとの違いにつながっている可能性が高い。
業界専門家の見解
アパレル業界アナリストの田中宏氏は「ナイキの今回の動きは、デジタル化と効率化を推進するグローバル企業の典型的な対応だ」と指摘する。「特に直営店からECへのシフトが進む中で、人的資源の再配分は避けられない流れです。ただし、成長市場である中国では人員削減を最小限に抑える戦略的判断が働いているのでしょう」
また、経営コンサルタントの佐藤美香氏は「このような大規模リストラは短期的なコスト削減には効果的だが、長期的なイノベーション能力に影響を与えるリスクもある」と警告。「特にクリエイティブ産業であるアパレル業界では、人材こそが最大の資産。バランスの取れた人員整理が必要だ」と述べている。
今後の見通し
ナイキは今回のリストラにより、年間4億ドル(約600億円)以上のコスト削減を見込んでいる。一方で、同社は2025年までにデジタル販売比率を50%に引き上げる目標を掲げており、IT分野など特定部門では引き続き採用を続ける方針だ。
業界全体としては、ナイキに続いて他の大手アパレルメーカーも同様のリストラを実施する可能性が高く、2024年はアパレル業界の構造転換がさらに進む年となるだろう。投資家や業界関係者は、今後のナイキの業績動向と中国市場の反応に注目している。
